『攻略ペース』+α左馬 さん作





フリートーク『攻略ペース』+α

文責:左馬(2006/03/15)



1.動機

まず、なぜ私がSAOの攻略ペースを考え始めたのか述べておかねばなりません。

一つには、SAO年表の助けになるから。
最前線が何層かで、時系列のいつ頃か推測できれば手がかりになりますからね。
もう一つは、将来SAOの二次創作SSを書くことが出来るなら、
時系列の混乱を避けたり、季節感を出したりできるかな、と思ったためです。
(まさに取らぬ狸の何とやら)

なお、以下の文章中の推論部分は、すべて左馬の想像であることを記しておきます。



2.前提

作品中から、最前線が第何層なのか判明している記述を拾ってみます。
ある程度の推論も交じっていますけども。なお、漢数字はアラビア数字に直してあります。

2012年11月4日正午 SAO開始(SAO1-2)
(参考:万年カレンダー、2012年11月最初の日曜は11月4日)

2012年12月上旬 最前線は第1,2層
(SAO1-4「ゲーム開始1ヶ月で5000人死亡」)
(SAO1-4「1ヶ月後に第1層の迷宮区が攻略され、そのわずか10日後に第2層も突破」)

2013年12月下旬 最前線は第49層(SAO外伝1.3-1)

開始から約1年半後 最前線は第58層(SAO外伝1-1,2,3)
(SAO外伝1-1「ゲーム開始から1年半近くが経過した現在では」) 
(SAO外伝1-2「かなり勤勉に冒険を繰り返してきたシリカでも、1年半かかって今の数字」)
(SAO外伝1-3「はるか1年半前のあの日、最初で最後のログインをしたとき〜その時のままだ」)

2014年10月初頭から約半年前 最前線は第61層
(SAO1-6「セルムブルグはここが最前線だった半年ほど前に」)

開始から約1年半後 最前線は第63層(SAO外伝3)
(SAO外伝3冒頭「48層主街区リンダースの街開きで〜目標貯金額300万コルを2ヶ月で達成」)
(SAO外伝3冒頭「この水車つきの家は晴れて『リズベット・ハイネマン武具店』〜3ヶ月前、春にしては肌寒い日」)
(SAO外伝3冒頭「この世界に来て1年半」)
(SAO外伝3末尾「あの夜のことは〜3ヶ月経った今でも」)

2014年10月初頭 第74層ボス攻略戦
(SAO1-7「アインクラッドは今……日本の暦では10月の初頭」)

2014年11月7日 第75層ボス攻略戦
(SAO外伝3末尾「『アインクラッド標準時 11月7日14時55分……』」)

これらの材料から、SAOでは1層あたり攻略に何日かかったか試算してみましょう。



3.試算

(1)全平均

結局クリアされた75層までを一括して考えると、
2012年11月4日〜2014年11月7日までの約2年間(=約730日)で74層差ですから、
平均して1層あたり約9〜10日かかったことになります。

しかしこれは、初期の混乱と第25層・第50層の大被害を全部含めての計算です。
実際にはもっと早いペースで攻略が進んでいるはずです。
第22層のように3日で攻略された層すらあるのですから。(SAO1-17)

全75層を25層ずつ、
序盤(第1層〜第25層前後)、中盤(第26層前後〜第50層前後)、終盤(第51層前後〜第75層)
に分けて考えてみましょう。

(2)序盤・中盤

第49層に到達するまでの約1年間を考えると、
2012年12月上旬〜2013年12月下旬の約12ヵ月半(=約380日)で48層差ですから、
SAO序盤・中盤では、第25層を含めて、平均約8日で1層攻略しています。
第25層を除いて考えるなら、より早かったでしょう。

(3)終盤

また、第49層から第75層までの約1年間を考えると、
2013年12月下旬〜2014年11月初頭の約11ヶ月半(=約350日)で26層差ですから、
SAO終盤では、第50層の影響および第75層を迎える準備を含めると平均約13.5日程度かかったことに。
序中盤と比べて長くなっている理由は、いくつか考えられます。
第25層よりも、第50層の影響の方が大きかったのか、
単純に後半ほど難易度が上がっているため攻略所要時間も長くなるのか。
また、(3a)で述べるような理由もあります。

(3a)終盤後半

第61層から第74層までの13層差は約半年(=約180日)でクリアされており、
第50層を含まないにも関わらず、
SAO終盤後半での1層あたりの攻略ペースは平均約14日と遅々たる歩みであったことが分かります。
(外伝1/第58層〜外伝3/第63層のそれぞれから第74層までの16〜11層差で約半年としても、平均12〜17日の範囲内です。)
ここには質の違う攻略ペースの遅れが顔を出してきています。

「『……俺だけじゃないな……この頃は、クリアだ脱出だって血眼になる奴が少なくなった』
 『攻略のペース自体落ちてるよね……』」
(SAO1-6、キリト・アスナ)
「『70層を超えたあたりからモンスターのアルゴリズムにイレギュラー性が増してきてるような気がするの』」
(SAO1-6、アスナ)

プレイヤーの世界に対する親和度が増し、またモンスターの難易度が上昇したために、
終盤後半の攻略ペースは落ちざるを得なかったのでしょう。

(3b)終盤前半

SAO外伝1とSAO外伝3の具体的な日付が判明すれば、細かい攻略ペースの変化も分かるのですが。
双方とも、約1年半後とのみ書かれており判然としません。
ある程度は推論で埋めていくとしましょう。

開始から約1年半近く(つまり1年半以上ではない)と書かれているSAO外伝1を、2014年5月初頭と仮定します。
すると、最前線が3層移動して第61層のセルムブルグとなるには、
前項で計算した平均ペースの最低値(平均12日)を当てはめても約1ヵ月後となり、2014年6月上旬。
さらにSAO外伝3の頃、第63層に到達したのは、2014年7月初頭といったあたり。

この仮定を元に考えるなら、第49層〜第61層の間は2013年12月下旬〜2014年6月上旬の約6ヵ月半(=約195日)。
単純に考えれば、12層差なので1層あたり平均約16日に及びますが、第50層を忘れてはいけません。
終盤前半の平均ペースから、第50層の影響がどの程度の遅延をもたらしたか逆算すると、
(終盤前半の平均ペース,第50層がもたらした遅延)では、
(平均10日,約75日)(平均12日,約50日)(平均14日,約25日)といった組み合わせが代表として挙げられます。
終盤前半から後半にかけての攻略ペース低下を鑑みると、
(平均10〜12日,約50〜75日)あたりが妥当な解でしょうか。

(もちろんここまでは、左馬の感覚でこんなものか、と仮説を立ててるだけです。
他の方であれば、もっと違う数字を選ぶかもしれません。)



4.考察

ここで、第25層と第50層の大被害の性格を比較してみます。

第25層の場合は、それまでボス攻略を主導してきた〈軍〉の精鋭がかなりの被害を被り、
そのために〈軍〉はボス攻略から内部調整へと活動をシフトしました。
しかし、それなりに被害を被ったでしょうが、まだ在野にKoBはじめボス攻略目的のギルドもあり、
まだ攻略組と中層プレイヤーのレベル差も致命的ではない。
(び さんの設定とも重なりますが、まだ完全に両者が分離しきってはいない頃だと考えます。
『月夜の黒猫団』とて、キリトがうまくやり遂げていれば攻略組の仲間入りを果たしたかもしれません)
したがって、第25層がもたらした遅延の中身は、ボス攻略の要員補充もそうですが、
むしろ〈軍〉の混乱と、以後のボス攻略ギルド間の連絡調整にかかった時間という意味合いが大きいと思います。

第50層の場合は、強力なボスを予想しておらず一度は攻略に失敗しただろう第25層と異なり、
準備を整え、KoB(主にあの御方ですが)の奮戦によって一度崩壊した前線を支えきっています。
ですから、ボス攻略自体は1日で終わっており、再挑戦による日数の損失はありません。
しかし、続発した勝手な緊急脱出行為は、それが生じた各ギルド内部の信頼関係をズタズタにしてしまったでしょう。
さらに攻略組の中でも、緊急脱出しなかった/できなかった真面目な高レベル前衛メンバーが多数失われたと想像でき、
既に開いていた攻略組と中層プレイヤーの溝を考えると、この穴を埋めるのは容易ではなかった筈です。
新たなメンバーを加えてギルド内部・ギルド間の連携を構築しなおし、攻略ペースを取り戻すまでには、
第25層の時以上の苦労があり、日数もかかったに違いないと私は考えます。
(第50層での「ドロップアウト組」がもたらした影響も無視できないでしょう。
無断脱出者が必ずしもオレンジになるとは言えず、どんな活動に走ったかは人それぞれでしょうが、
少なくとも全体では、攻略を積極的に助ける向きには働かなかったと思います。)

さて、再び攻略ペースの話に戻します。

(1)全階層:平均約9〜10日(初期の混乱、第25層、第50層を含む)
(2)序中盤の第50層まで:平均約8日(第25層を含む)
(3)終盤の第50層〜第75層:平均約13.5日(第50層を含む)
(3a)終盤前半:平均約10〜12日(第50層含まない、第50層の遅延を約50〜75日と仮定)
(3b)終盤後半:平均約14日(第75層を含まない)

上で述べたように、第25層がもたらした影響を第50層より少なめに見積もります。
そうですね、約30〜50日ぐらいと仮定しましょう。
(根拠は何にもありません!)
序中盤では、
2012年12月上旬〜2013年12月下旬の約12ヵ月半(=約380日)から第25層の影響を除いた約330〜350日で、
47層差を突破した計算になるので、1層あたりでは平均7〜8日となります。
……第25層込みの場合と、あまり変わりませんね。

クォーター・ポイント以外の平均日数で突破できる層については、
ゲームシステム上、階層が上がっていくに連れて次第に必要な日数が増えていくと仮定できます。
(第2層突破には10日もかかっていますが、プレイヤーが攻略行為に慣れる為に要した部分が大きく、
その後〈軍〉が主導するに従い、比較的テンポよく攻略は進んだのではないでしょうか。)
第75層までを25層ずつまとめて、序盤・中盤・終盤と分けたとき、
それぞれの攻略に必要な平均日数が、等差数列的に増加していくと仮定します。
(これも根拠なし!)
終盤後半は「プレイヤーの慣れによる攻略ペースの低下」が混じるので考慮から外すとして、

序盤:平均 a 日、中盤:平均 a+k 日、終盤前半:平均 a+2k 日

と仮定すると、
まあだいたい、a:6〜7、k:1.5〜3ぐらいの範囲でしょうか。(適当だ……)



5.結果

まとめてみます。



以下の仮定あり:

SAO外伝1:2014年5月初頭、SAO外伝3:2014年7月初頭。
第25層では約30〜50日、第50層では約50〜75日の遅延を被る大被害を受ける。
第70層以降、プレイヤーの世界に対する親和度が増し、またモンスターの難易度が上昇したため、攻略ペースが低下。
ゲームシステム上、階層が上がるほど必要な攻略日数は次第にじわじわ増えていく。

攻略ペース:

(1)全階層:平均約9〜10日(初期の混乱、第25層、第50層を含む)
(2)序中盤の第50層まで:平均約8日(第25層含む)
(2a)序盤:平均約6〜7日(初期の混乱、第25層を含まない)
(2b)中盤:平均約8〜10日(第25層、第50層を含まない)
(3)終盤の第50層〜第75層:平均約13.5日(第50層を含む)
(3a)終盤前半:平均約10〜12日(第50層を含まない)
(3b)終盤後半:平均約14日(第75層を含まない)



もちろん、ここに述べたデータは全て、左馬がイメージしたアバウトな攻略ペースに過ぎません。
実際の攻略ペースは、階層ごとのイベントや、SAO全体の事件にも左右されたでしょうし、
1層違っただけで、大きく攻略に要した日数が上下したこともあったでしょう。
それでも、何かしらのご参考になれば幸いです。
御意見のある方、何かお気づきになった方は、是非ご指摘ください。
では、この辺で失礼いたします。

【終】




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フリートーク+α『キリトのレベル停滞期』



キリトのLvですが、2013年12月のクリスマスの時70Lv、外伝1の時78Lvということが分かっています。
外伝1の時期を2014年5月初頭と仮定すると、この間4ヶ月余りでわずか8Lvしか伸びていない計算です。
(最前線は、第49層から第58層まで、9層進んでいます)
一方、SAO1本編ではゲームクリア時のキリトは94Lvだったとのこと。(第三回人気投票回答から)
外伝1以後の6ヶ月で16Lvも伸びています。
(最前線は、第58層から第75層まで、17層進んでいます)
高レベルになるほど次のレベルまでに必要な経験値は高くなりますが、同時に情報面でも有利になるので、
あまりレベルアップの速度は変わらないと思うのですが……。
んん? キリトは常に、最前線よりも20Lvぐらいマージンを取ってますね。
高レベルになると、それなりの狩場でなければレベルに応じた経験値が入手できないのでしょうか。
だとしたら、少しは説明できるかもしれません。
また、2013年12月のクリスマス事件後、世界に対する考えを変化させたキリトが、
レベルアップや攻略以外にも、何かの行動を起こし始めた……のかもしれません。



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フリートーク+α『リズベット・ハイネマン武具店の店開き』



「巨大な水車がゆるやかに回転する心地よい音が、工房の中を満たしている。
 さして広くもない職人クラス用プレイヤーホームだけど、この水車のおかげでやたらと高かった。48層主街区リンダースの街開きでこの家を見つけたとき、あたしは一目で『ここしかない!』と思って、次に値段を見て愕然としたものだ。
 それからというものあたしは死にものぐるいで働き、各方面に借金をして、目標貯金額三百万コルを二ヶ月で達成した。もしここが現実なら全身にがっちりと筋肉がつき、手に堅いたこが出来てしまうほどにハンマーを振りまくった。
 その甲斐あって、数人いたライバルにどうにか先んじて証書を手にし、この水車つきの家は晴れて『リズベット・ハイネマン武具店』となった。三ヶ月前、春にしては肌寒い日のことだった。」
(SAO外伝3冒頭)

さて、48層主街区リンダースの街開きは、いつのことでしょうか。
SAO外伝1.3を参考にすると、2013年12月下旬時点で最前線が第49層だったわけですから、
第48層が攻略されたのは、すぐ目前の12月中旬前後と思われます。
そこで水車付きの家を見つけたリズベットは、すぐに死にものぐるいで働きはじめ、
目標貯金額を達成したのが2ヵ月後の、2014年2月中旬前後。
で、これが「3ヶ月前、春にしては肌寒い日」と回想されているので、
外伝3の冒険は、2014年5月前後……?
1年半後、で合うことは合うのですが……前述の『攻略ペース』の仮定とは食い違いますね。

疑問点としては、2月時点で「春に『しては』肌寒い日」という表現を使うかというのが一つ。
私にとっては、2月は肌寒くて当たり前だし、春というより冬という感覚です。
また、末尾の方で「幻想の夜の思い出」を「3ヶ月経った今でも」思い出しているリズベット。
すると外伝3の冒険は2014年7月〜8月?
こっちの方が、前述の『攻略ペース』の仮定と合います。
もう一つ、

「他のフロアは夏なので油断していたら、ここでは地面に雪が積もり、家々の軒先からは巨大なつららが下がっている。」
(SAO外伝3前半)

「片手用直剣に限って言えば――。今年の夏に鍛えたあの剣を上回るものは一つとして出来なかった。」
(SAO外伝3末尾)

なんて地の文もあります。外伝3の冒険は「夏」に行われたもの。

さらに、外伝1との比較。
外伝1.3の"迷いの森"は見事に雪積もる冬景色でしたが、
外伝1の"迷いの森"は特に寒さを感じさせたり、あるいは花が咲き乱れる描写はありませんでした。
私個人は、挿絵のイメージも相まって、外伝1は「初夏」の話なんだな、と漠然と考えていました。
外伝3が2014年5月頃の話だとすると、外伝1は2014年2〜3月頃の話になりそうですが、ちょっと印象が違うような。
また、

「『ああ……。五日も前線から離れちゃったからな。すぐに、攻略に戻らないと……』」
(SAO外伝1-9・キリト)
「『……このまま、ここから出られなかったらどうする?』
 『毎日寝て暮らす』
 『あっさり即答するわねえ。もうちょっと悩みなさいよ』」
(SAO外伝3後半、リズベット・キリト)

というキリトの攻略に対する意識変化も見て取れます。
こうした変化は、アスナにも影響を与えており、

「『……わたし、前とそんなに違う……?』
 『そりゃあねー。知り合った頃は、寝ても醒めても迷宮攻略! って感じでさ。ちょっと張り詰めすぎじゃないのーって思ってたけど、春頃からすこしずつ変わってきたよ。大体、平日に攻略サボるなんて前のあんたからは想像もできないよ』
 『そ、そっか。……やっぱ影響受けてるのかな……』」
(SAO外伝3前半、アスナ・リズベット)

という会話にもつながるわけです。
外伝3が2014年5月頃だと、「前とそんなに違う」「春頃からすこしずつ」という言葉と合わない印象です。
結局は、状況からのイメージ的判断にすぎないのですが、
私としては、外伝3が2014年7月頃の話としたほうがしっくりくるのです。

しかしそうすると今度は、「目標貯金額三百万コルを二ヶ月で達成した」2014年2月中旬前後と、
「晴れて『リズベット・ハイネマン武具店』となった」「三ヶ月前、春にしては肌寒い日」、2014年4月頃が一致しません。

そこで結構無理があるのは承知の上で、

リズベットが店の証書を入手したのが2014年2月中旬前後、
水車つきの家を『リズベット・ハイネマン武具店』として店開きしたのが2014年4月頃。

であると分けて解釈しました。理屈はこうです。

300万コルは水車つきの家本体の値段であり、
リズベットが武具店の体裁を整えるにはさらに内装を整える必要があったでしょう。
ライバルがいる状況で、内装の代金まで用意してから購入する暇はありませんから、
最低限の金額が揃った段階で、リズベットは取るものも取りあえず証書を入手したはずです。
そして、武具店として開業するため、またお気に入りの我が家にするため、
内装の費用を工面し始めたのではないかと。
これなら、2014年2月〜4月のブランクを説明できると思うのですが……。

とまあ、こんな仮説を立ててみました。(笑)
どうでしょう?
御意見のある方、何かお気づきになった方は、是非ご指摘ください。

それでは、本当にこの辺で失礼いたします。

【了】