〜悲劇の造り手〜 | カラス さん作 |
ソードアートオンライン 二次創作 〜悲劇の造り手〜 「おっラッキー、トレジャーボックス発見!」 「おいおい大丈夫なのか、トラップなんじゃないの?」 「だ〜いじょうぶだって。俺前ここに来たことあるもんよ。そんときゃな〜んもなかったぜ」 「ってことはこいつはアタリってことか。」 「そ・ゆ・こ・と、さっとと中身いただいちまお〜ぜ」 迷宮の中で度々見られる光景。思わぬ幸運に喜ぶ冒険者達・・・ だが次の瞬間そこにいる誰もが予想しなかったであろう悲劇が起こる。 正しくは“一人”を除いた誰もがだが・・・ 『ドッゴォォォォォン!!!!』 おそらくは何が起きたかもわからなかったであろう。 突然の爆発、それは今まさにその宝箱を開けようとしていた二人をのみこんだ。 「ヒッ・・・」 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 「なっ・・・なんだよ今の!何がどうなってんだよ!!」 「お、おい、ラース!ジーク!どこいっちまんたんだよ!?」 「う、嘘だろおい・・・冗談だよな?」 残されたパーティーメンバーの悲痛な叫びが周囲に響き渡る。 だがその声に答える者は既にいない・・・ しばらく後、彼らが力なく去っていったのを見届けた後、一つの影がガサリと蠢く。 「クッ・・・アハハハハハハッッッ!!」 そして周囲に響く笑い声 「あいかわらず虫けらどもがゴミみたいに死んでくのを見るのは最高だ。」 Sword Art Online Side Story 〜The Tragic Maker〜 ソードアートオンライン 一人の悪魔が生み出した奇跡のようなこの世界で、俺はある不満を抱えていた。 巷のオレンジプレイヤーどもはちんけな刃物を振り回しているだけで満足しているみたいだが俺は違う。 そもそもそんなことをしてたらいつ反撃にあうかわからねぇじゃねえか。 現実に『軍』とかいう連中がオレンジ狩りを盛んにやってると聞く。 まったく・・・馬鹿は馬鹿同士じゃれあってりゃいいってもんだ。 俺が求めているのは他者の不幸であって、自分まで不幸になっちまったら元も子もないってもんだ。 反撃にあわないためには獲物に見つかっちゃいけねぇ、だからまず俺は隠密をあげることにした。 次に考えたのが実行手段だ、弓ってのも考えたがそもそもこの世界にゃ弓なんて物はないらしい。 それに弓じゃ失敗したときに自分のことがばれちまうしな。 誰か他のヤツにやらせて俺は高見の見物ってのがベストだが、そうそう上手くいくもんじゃねぇ。 そんな悶々とした日々を送っていた俺に神・・・いやこの世界の神は悪魔って言ったほうがしっくり来るのかね・・・ まぁどっちでもいいんだがその神様だか悪魔だかは、俺に素敵なプレゼントをしてくれた。 俺は狂喜したね・・・どうやら神はこの俺を祝福してくれているらしい。 エクストラ スキル『トラッパー』 実にわかりやすい。要は『罠』をはって獲物を狩るための技術。 まさにこの俺にぴったりなスキルじゃねぇか。 このスキルを磨くうちに、さらに素敵なことがわかった。 どういうわけだか知らねぇが、このスキルは隠しスキルの中でも未発見のものらしい。 少なくとも俺の調べた範囲じゃこんなスキルがあるなんて情報は皆無だった。 罠ってのはバレちまっちゃあ意味がねぇ。 罠が存在するってことが知られちまうだけで警戒されちまうからな。 この世界には既に『罠』が存在する。 ダンジョンにはトレジャーボックス・・・要するに宝箱がところどころに配置されているが、 その中にはトラップが仕掛けられてるものもある。 他にもダンジョンにはいくつかの罠の存在が確認されているが、 ゲームシステムによって仕掛けられた罠ってのは一定だ。 そして何より重要なのは、システムにある罠は“動かない”ってことだ。 要は一度そこに罠があるってばれちまったらそれまで、情報が出回ればひっかかる者はいなくなるってわけだ。 罠付き宝箱も同じで、罠箱は決まった場所から動くことはない。 だからいつも同じ場所に宝箱があればそれは罠確定って寸法だ。 だが俺の罠は違う。当然だが“その場所にはなかった罠”を作れるからこそのトラッパーだ。 そしてそれは、他の罠の見分け方が通じないことを意味する。 だからこそ俺のスキルの存在が知られていないってことは重要ってわけだ。 システム以外の罠が存在するなんて知られちまっちゃあ警戒されちまうからな。 罠を仕掛け、近くに隠れ、じっと獲物がかかる瞬間を待つ。 それこそ何時間とまっても誰もかからないことだってある。 マゾいと思うやつもいるかもしれねぇが、釣りを思い浮かべりゃいい。 獲物がかかった瞬間の快感を思えば、待ち時間なんざ苦にもならねぇってもんだ。 そして今日も俺は闇に潜む・・・今日はどんな獲物が引っかかってくれるんだろうって、胸をワクワクさせながら・・・・・・ 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」 周囲に響きあがる叫び、それは俺にとってなんてことはない日常だ。 今回使ったのはアラームトラップ ありふれた罠だが、獲物がじわじわと追い詰められ徐々に絶望に支配されていく様が気に入っている 今日の獲物はなんてことはない5人組のパーティーだった。 黒ずくめのガキがやたらと俺のきにかかったが、それだけ・・・のはずだった。 シーフらしき短剣使いが俺の仕掛けたトラップボックスをあけた瞬間に、けたたましい音が鳴り響き、 周囲から怒涛の如く化け物どもが押し寄せる。 黒ずくめのガキが転移の支持を叫ぶが、俺の罠はそんなにあまいもんじゃない。 ボムトラップのような一瞬で済む罠とは違い、アラームトラップは逃げられちゃもともこもない。 だから俺はあらかじめもう一つの罠を周囲に仕掛けてある。 『結晶無効化エリア』 この世界に魔法はないが、魔法みたいな効果を発揮するアイテムがある。 それが『結晶』で、瞬間回復や転移脱出などを可能とする代わりに、非常に高価なアイテムだ。 非常に便利なアイテムだが、どんな状況でも脱出できてしまうのはまずいってんで、 ダンジョンなんかにはところどころこの結晶が使えないエリアってのが指定されてることがある。 どうやらそれも罠扱いの一つだったらしく、トラッパーである俺は、その結晶無効化エリアを作ることができるってわけだ。 連中の混乱が手に取るようにわかる。 獲物の顔色が徐々に絶望に染まっていく。 毎度のことだが、一番苦労するのはここで笑いをこらえることだ。 一人食われ、二人喰われ・・・そこで違和感に気付く。 あの黒ずくめのガキだ。 「なんだあのガキ・・・化け物か?」 押し寄せる怪物どもに押しつぶされていくほかの四人とはことなり、 黒ずくめのガキはすさまじい勢いで化け物どもを駆逐していく。 だがいかんせん数が多すぎた。 最後まで耐えていた少女が光になった瞬間、黒ずくめのガキはすさましい叫び声をあげた。 そしてガキはただ一人その惨劇の中で生き残る。 しかし既にその瞳に光はなかった。 「ふ〜、久々にイーもんみれたぜ。クックック・・・アーハッハッハ!!」 「しっかしなんだったのかねあの化けもんみたいなガキは」 あの惨劇の中唯一生き残ったガキのHPは、それでも半分近く残っていた。 どう考えてもあれは『攻略組』のレベルだろう。 「ありゃぁビーターかね、正体隠してお仲間ゴッコでもしてたってとこか・・・まぁ俺には関係ないけどな。」 「さーて、次はどんな罠がいいかな・・・クック」 そして闇にしか生きれない男は闇の中に消えていく。 その瞳に更なる狂気を宿したまま・・・・・・ 悲劇の造り手 〜了〜 |