サンバン。2 | ロロ さん作 |
まえがき * SAO if ストーリーですので、ifなので、ifなんです(何 僕らはデータじゃない!人間です!いぁ、ロロです! あれ…当初の中篇ほのぼのストーリーとかどこいったんだろなぁ…(苦笑 回をこなすごとに書き方が変わっていくような…。 ネタ考えて構成ねって書いてるうちは楽しいのに読み返すとヒドイ! ヽ(`Д´)ノ なにこのまえがき…(´д`; サンバン。 2. その日、太陽が傾き始めたころ。 マルチは再びあのビーターを見つけた。 あのひ自分を救ってくれたときよりも格段に強くなっていることが見て取れる。 おかしな格好をしためっぽう素早い刀使いがこの町には住んでいる、という噂は知っていたし、それが彼であることは始めて聞いたときから確信を持っていた。 だが不思議とすれ違うことすらなく、あの日からたった1月。 その1日1日が、マルチの蟠りを膨らませていた。 「ちょっときてみろよ!門前でデュエルやってっぞ!」 私がなじみの店でなじみの店主ととりとめの無い日常的な会話をしていたときだ。 大通りがなにやら騒がしくなっていた。 騒音から察するところ、どこぞの馬鹿が転移門のすぐ近くでデュエルを始めたらしい。 「ったくどこの馬鹿よ」 「全くだね、あんなとこでやりあうなんて、これ以上ない通行の迷惑だ」 「私、ちょっと見てくるわ」 どこの馬鹿か見てみたい、という筋違いの好奇心だった。 なじみの店から1本路地を抜ければそこにはもう、多くの人だかり。 よくぞまぁこの寂れた街でこれほどの人間が集まったものだと思った。 「ちょっと、どこの馬鹿がやってんの?」 適当に近くにいた大きな男に話しかける。 観戦に夢中になっていた男は「ん?」と嫌味に見下ろす。 悔しい話だが、背が低くてよく見えなかった。 「あぁ、血盟騎士団のと、なんだか変な使い魔つれた侍だな」 どくん、体の中で何かが脈打つのがわかる。 変な使い魔、侍。 「その侍って黒っぽいコートに袴!?」 「いぁ、上半身は見たこと無い装備だ。下は…あれは袴かなぁ」 男の言い方はなんともはっきりしていない。 「ちょっと肩借りるわ」 さまざまな問題もあろうが、私はかまわず男の肩に飛び乗る。 「ちょ…」 このはっきりしない大男は今は岩か何かとしよう。 普段より1M以上高くなった私の視野の中心に彼はいた。 ちょうどハイライト、言った所か彼が猛烈なラッシュ攻撃に入っている。 服装から血盟騎士団の人間と思われる男がそれを辛そうに受けていた。 かなりの速さで繰り出される斬撃を正確に払っていく。 地味な攻防戦だが、その力量は私のとは比べ物にならないであろう。 「あいつ…」 結局そのまま彼は押し切った。 あのとき私達の前で放った刀突撃剣技<武御雷>。 容姿がやや変わっているためか本当に同一人物なのかと、疑問にさえ思った。 (強くなってる…) 勝ったはずなのだが、顔は浮かず、あのとき見せたくらい顔をする。 (…話して見たいな…) 「おいねーちゃん、終わったしそろそろ降りてもらえるか?」 「え、あ。ごめんね」 イチは立ち尽くす。 その心情は後悔で一杯だ。 「すごいじゃないか、にーちゃん!」 「うちのPTに入らないか!?」 「いぁうちに!」 「抜け駆けなんてずるいぞ!」 そんなギャラリーの声は、徐々にイチには聞こえなくなっていく。 やがて血盟騎士団の男が転移門に消えると、イチはあっという間に取り囲まれてしまった。 「取材いいですか!?」 「かっこよかったぞ」 「刀かっこいいぞ」 様々なその声は、イチにとっては騒音の他になかった。 …こんなことして何がすごいんだよ… …下手をすれば傷つけるどころか… …なんなんだよ、こいつらは… …俺に…かまうなよ…! どこかの街の個人新聞社の者か、録音結晶を差し出すめがねの男。 イチの正面に立ってもう一度耳障りに問う。 「取材いいですか!」 イチはうつろな瞳でそのめがねをみた。 「あ」 その眼はもう、人の目ではない。 何かに取り付かれたような、そんな眼だ。 いかれている、ともとれる。 ゆっくりとしたどうさでイチは水晶ではなく差し出した腕を掴んだ。 うわごとのように、うなる。 「…るせぇよ」 「…へ?」 「うるさいっていってんだよ」 そのまま手に力をいれ、めがねの男を押す。 ソードアートではないがスキルのひとつにカウントされる格闘スキル<<プッシュ>>へとつながる行動だ。 その力が最高にこもったとき耳障りなSEと緑色の閃光が発生する。 犯罪防止コードにイチの攻撃が防がれた証だった。 「うひゃぁ!?」 押されたわけでもなく、痛かったわけでもないが、めがねの男は人ごみに倒れた。 「俺にかまうな!」 イチは狂ったように抜き身のままだった刀を振り回す。 …実際、これでは狂人、オレンジではないかと疑われるのは間違いないだろう。 憤りと憎悪。 『孤独なビーター・ソロ』としての自分を見失ったイチはゆっくりと人ごみに向けて歩き出す。 「…どけよ…」 生気の無い瞳と、うなるような声でイチが言うと、ギャラリーは恐る恐る、避けるように道を明けていく。 イチ自身、どうすれば良いか分からない。 何も考えず、適当に名前の浮かんだ街に逃げるように転移した。 「転移…フローリアス」 自分とはなんだろうか。 青春時代の貴重な2年間を、死の世界で過ごした少年は壁にぶち当たる。 剣士としてではなく、人間としての。 結局俺はここで何をしてきたのだろう。 1年以上『孤独なビーターイチ』を装い、人とのかかわりを避け続けてきた。 何故? そうだ、知人の死に耐えられないからだ。 発狂してしまいそうなあの光景。 だめだ、思い出したくない。 何故? 何故発狂すると思った? …自分が弱いとおもったからだ。 そのとき目の前で起きた不幸は、いつか必ず自分にも降りかかる。 そう、確信したからだ。 望んで孤独になった俺は…。 「わからないよ…。俺は…」 イチはアインクラッドの47階、その外周に足を投げ出す形で座っていた。 もしこの鉄の城が本当に空に浮かぶ島だったら、重さで崩れてきっとイチは落ちるだろう。 いっそ落ちてしまいたい、そんな悲観的な願望すら感じ取れる光景だった。 ブツブツと自問自答、呪詛のようにつぶやくイチに1人の人間が近づいていく。 冷静な状態のイチならばこれに気づかないなど絶対にありえないのだが、このときに限っては例外だった。 「大…丈夫?」 その人間の名はマルチ。 過去にイチに生命を助けられたことのある人間だった。 そして『ビーター』という傘で阻まれた人間でもある。 「…」 イチは一瞥をくれると、すぐにまた下を向いた。 今なら殺せるぞ、やるならやれよ。 背中でそう語るような、とても情けない態度だった。 「うぁ!ここ高いなぁ…」 そんな態度には答えず、マルチは座り込むイチの隣に立つ。 「隣いい?」 「…うせろ」 うなるようにイチは口を開く。 「冷たい人だなぁ、こんな美人が元気付けてやろうと…」 「お前なんかしらない。うせろ」 お互い、顔すら見ない。 イチは足元に広がる空を見下ろし、マルチは眼前に広がる世界を眺めていた。 「やっぱり覚えてないかな…」 マルチは残念そうに下を向く。 イチではなく、イチの使い魔のドルと眼が合う。 「…あのときはありがとうね」 「…」 マルチは再び空を見上げ語り始める。 「あんたは覚えて無くても、私は覚えている。1月ほど前に私はあなたに助けられたわ」 「…」 イチとて覚えている。 久方ぶりに見た攻略組の男と一緒にいた、変な女だ。 他人と接点が無く大して記憶することの無いイチは、数少ない人との接触を早々忘れたりはしない。 「42階、『拘束の大空洞』、レイジノーム…。私は」 「うるさいんだよ!」 イチは顔を上げ、マルチをにらみあげた。 「…1人になりたいんだ。消えてくれよ」 命令でも頼みでもなく、願いだ。 1人になって、自分の身の振りを考えたい。 いつか人を殺すくらいなら、いっそ──…。 「嫌よ。あなたのその眼は、死人のそれとおなじだわ。ほうっておけない」 きっぱりとその願いを却下し、マルチはイチのとなりにちょこんとすわった。 「始めてあったとき、若そうでかっこいいかなって思った。あ、お世辞じゃないよ」 事実、イチは若い。 14でこの世界に入り約2年、17歳になった。 かっこいいかどうかは人の価値観よりけりであろう。 「でも、今日分かった。君は若すぎる」 「…」 「私、最初のころはずっと始まりの街にいたんだ。そこで君みたいな子、たくさん見てきたの」 「…」 「何をしたら良いか分からない、どうすればいいのかわからない、善悪が付かない。…帰りたい」 「!」 「今の君は、あのこ達と同じ目をしてる。生きているのか、死んでいるのか、うつろな眼」 黙って聞いていたイチはようやく会話らしい会話をする 「…その子供はどうなった?」 恐る恐る、いや、答えを聞きたくないというほど弱腰の聞き方だった。 その質問の問いはイチの想像と違わず、冷酷に短かった。 「死んだわ」 …死。 それは前線だけで起きることではない。 そして必ずしも本人の意思・行動に左右されず降りかかることもある。 「ほとんどの子が外周から飛び降りたり、自棄を起こして無理な戦闘で…。君も今、飛ぼうとしてたんでしょ?」 イチの核心を突く問いだった。 自問自答の果てにたどり着いた先は、『もっとも簡単なこの世界からの脱出方法』であった。 それはつまり、自決。 「…あぁ」 なぜか分からない、だが、話していると不思議と心が落ち着く。 それがイチの心境だ。 こいつなら他の答えも、あるいは─…。 「君はあの時最後にいった。『ビーター』以外の何者でもない、でしょ?」 ビーター。 そう言い聞かせてこの1年を生きてきた。 その一言で簡単に人に避けられる。 「…そぉ、だ。孤独なビーターのイチ。俺はイチ…」 「ちがうわ」 マルチの声に自然と力がこもっていく。 「君は、いいぇ、この世界にいるほとんどの人が忘れかけている」 すぅっと一息ついて、力強くマルチはいった。 「ビーターとか、攻略組とか、私達はそんなのじゃない。剣士ですらないわ」 「私達は『人間』でしょ?」 「あなたが思いつめているのは、あなたがまだ人間でいる証拠。ここからとんだらただのデータの塵になるわ」 いつから私はこんなに偉いことをいえる人間になってしまったのだろうか。 確かに彼は年下のようだ。 体格は私のほうが小さく作られているが、それならあの喜怒哀楽の激しさも納得がいく。 (この死の世界で育ってしまった不安定な子供なんだ…) いつ戦闘で、場合によっては同じ人間の手によって命を落とすかもわからないこの世界。 知り合いも、友達も、親さえもいない世界へある日突然放り込まれれば、気も狂うだろう。 そうして多くの子供たちはこの世界からいなくなってしまった。 せめてこのこだけでも、孤独から救いたかった。 「そうか…。なぁマルチ」 イチが真っ直ぐに私を見つめる。 年下だとは思うが、やはりかっこいいとおもった。 「俺はこれから、どうすれば良いと思う?」 始めてみる、素顔だった。 喜怒哀楽どれでもなく、「イチ」という顔。 その顔にはもはや迷いはなさそうだ。 偽るのももうやめたのか、私の名前もはっきりと告げてくれていた。 「…どうもしないで、生きれば良いんだと思う。私はそうやって、今も生きてるわ」 正直、そんな質問は困る。 私達『剣士』ができることは戦うこと。 この子のような子達を救うにはもはや戦って帰るしかない。 だがそれにはリスクが大きすぎ、生き残ることすら危ういだろう。 本末転倒、口だけで救われれば、私はとっくにこの現実に帰っている。 …苦し紛れに『生きれば良い』などといってしまった。 「生きる…か」 イチは何かを思い出したようにしばし考え、黙り込む。 さっきまでとちがって、その目には生気が満ちているようだった。 苦し紛れでもこの子の役に立てただろうか? 「…よっし!」 バシンッ! 彼は両手で両頬を叩く。 分かりやすい気合の入れ方、気持ちの切り替えだ。 「あんがと。道が決まった」 ニヤリと彼は笑って見せた。 あのときの明るい顔だった。 3へ。 あとがき 感情の推移を書くって難しい…ロロです。 自分の国語力の無さが問題なんですけどね(´д`; 構成は練れても情景の描き方とか…感情表現とか…設定の荒さと読みの甘さとか…orz 完結したら全編リメイクか…!? …無理(´д`* 誤字直すだけでしんどそうだぁ… |