イチバン。ロロ さん作





〜はじめに〜 筆 ロロ(ろろ、です!)
この物語はフィクション小説、ソードアートオンラインの2次物です。
自分なりにこんな感じじゃないかな?というアレンジが加わっていますがなるべくゲームシステムそのものはいじらない方向でがんばって行こうと思っています。
ストーリー上で説明が入りそうな所は可能な限り自然(っぽくないというつっこみは…(´д`;)に話させていますが、あとがき奥付のほうでまとめて解説の方向でお目汚しを(何様
きったない文章ですが、酒の肴にひとつ、('w'*
                            ──へいせい18ねん3がつ24にちきんようび──

ソードアートオンラインif   イチバン     


1 

そのコートの男は突然現れた。
頭にはお世辞にもかわいいといえない人形のような物を乗せ、崩壊した私達PTの前に。
「礼はいらない、言葉もいらない。俺が振るうは活人剣にあらず」
なにやら独り言をブツブツと良いながら左腰に手を当てる。
右足を前に、そして体をぐっと沈める。
「ちょ…っとぉ」
私はなけなしのHPを振り絞り立ち上がった。
HPが減るという行為=苦痛ではないく、すさまじい衝撃を受けたということでもなかった。
私はどうやら状態異常に犯されているようだった。
「あんた…無理…にげ…」
逃げたほうが良い、そういいきる前にそのコートの男が青白い光に包まれる。
その光、その男はまさにソードアートそのものだった。



私を含む4人PTは中層のある攻略済み迷宮区においてモンスターを狩っていた。
とりわけ意味がある行為ではないが、しいて目的をあげるとすれば生活費をためることとレベルアップ目的とした狩りといえるだろう。
ホームタウン4階層主街区ブレインベルズの広場で暇をもてあましていた集団で組んだ、にわかパーティーだった。
お互い協力するために最低限の情報を公開し、そののち最前線からはすこし下がった42階という場所を選んだ。
盾持ち片手剣2人と両手大剣が1人、そして私が短刀と、どう転んでもこの階層で全滅などするはずはないと、全員一致でそう決まったからだ。
もちろん私も問題ないと思った。
私こと、短剣使いマルチはレベルはもうじき60と、一般的な安全マージンを超えていたからだ。
PTになった男たちはあまり細かくは提示してくれなかったが
「その階層なら大丈夫だよ」
そういっていた。
なら、今この光景はどういうことであろうか。
まだ誰も最悪の状態には陥ってはいないにしろ、私を含むメンバー全員が地面に倒れている。
立っているのは突然現れたコートの男だけだった。
モンスターもいたが、それは立っているというよりは浮いているという状態だった。



「礼はいらない、言葉もいらない。俺が振るうは活人剣にあらず」
我ながら何を言っているんだろうな、とイチはおもった。
1年半に及ぶソロ狩り生活のおかげか、とっさにヘルプにはいったは良いがろくな言葉が浮かばなかったのだ。
(…レイジノームか。厄介なのとエンカウントしたんだな)
刀スキル<<居合い>>を待機させながらまずは敵を探る。
レイジ・ノーム。
霊濃霧とよばれ、雑魚としてエンカウントするモンスターの中ではこれ以上ないくらい強敵といわれる。
体全体が黒い霧で、その霧のどこかにコアとよばれる本体があるという霧状モンスター。
強敵とよばれるゆえんは、回避不可能なレベル1麻痺毒を使うことである。
正確には常時麻痺毒を垂れ流しているようなもの。
攻撃力はたいしたことない。
攻略組がこの階を制圧したときは序盤こそ手を焼いたが、パラライズポーション(麻痺治癒用の回復剤)使用後の治療時間に耐・レベル1麻痺毒効果が発見されてからは一方的に狩られる存在になったものだ。
何も情報を持たないもの、それが個人であればまず間違いなく麻痺中に他のモンスターやらに袋にされて絶命するであろう。
──たとえ麻痺を看破したとしても、霧の中からコアを探すのがまた1人でやるには途方もなくつらいのだが──
眼下で倒れている4人はどうやら情報を得ていなかったらしく、4人全員からパラライズのエフェクトが発生していた。
…この状況を打開するには途方もなく時間がかかりそうだ。
(聞き耳であぶりだせない物かね)
居合いの待機状態からパッシヴに聞き耳をオンにし、脳内電位によって徐々に倍率を上げていく。
『ちょ』
(うひぇ!?)
心臓が飛び出るかと思った。
すぐ後ろからものすごい大きな声を拾ってしまった。
あわてて聞き耳をオフにする。
「あんた…無理…にげ…ほうが…」
フラフラと倒れていた女が立ち上がったようだった。
この状況において俺が逃げるという行為は、彼女ら4人の死に直結していた。
レベル1系の毒は10分もたたずにとけるのだが、霧はなくならない。
つまり解毒されてはまた掛かるという永久的な麻痺なのだ。
「…あんたすげーな」
今にも倒れそうな女におれは背を向けたまま話しかけた。
「レベル1とはいえパラライズで立てるとか、毒剣のスキルでもとってんのかな?」
なかなか返事は返ってこない。
後ろを向いてやってもいいのだが、生憎パラライズポーションはもっていないので向き直る行動は得策とは思えなかった。
「…あんた…麻痺…きか…」
構えたままコアを探していると後ろからか細い声が返ってきた。
「まぁまて、今集中してるから」
振り返ることもなく、構えもとくこともない。
レージノームは動かず、イチも動かない。
「…」
か細い女の声はしなくなったが、自分に視線が集まっていることがイチには感じ取れた。
じりじりと時だけが流れ、いつのまにかレイジノームの奥にもう1体レイジノームが現れていた。
そのまま数分の時が流れていく──…


「…あーくそ!コアどこだ!」
長い沈黙を破ったのはコートの男のほうだった。
格好つけて入ってきた割りには短気なやつだ。
刹那、ずっとコートの男にまとわり付いていた青白い光が小さくなっていく。
良く見れば細身の鞘に吸い込まれていくようだった。
確かあの構えは…
ヴン、というスキル発動を知らせる音と共に男の頭上に──変な人形にかぶる形で──<<居合い>>という表示。
ザッと男の体か分身したかと思えるほど早くアクションを起こした。
刀系スキル居合い、だったとおもう。
表示も間違いなかった。
非常に早く、青い残像を残しながら男の剣は闇を切り裂…くことはできなかった。
MISS!!
私がこの世界にきてはじめてみるミス判定の表示。
どうやらレージノームには実体がないらしい。
…これでは勝てるはずなどない!!
「こぉんちくしょー!」
男の生み出した青い光は瞬時に赤に変わり、再びスキル発動を知らせる音がなった。
<<ツバメ返し>>
居合いで振りぬいた刀は、赤い閃光とともにそのまま垂直に跳ね上がった。
しかし無常にも再び表示は、
MISS!!MISS!!
とミス表示を増やすという結果に終わった。
何か自分でもできることはないか、精一杯考える。
(…あいつは瞬時に麻痺だとわかっていた。つまり情報をもっている。それでも無実体の敵に攻撃するということは…?)
マルチの中ではじき出されたのは、見殺しにできないか倒す方法があるか。
男の変な口ぶりから前者で張り込んだ可能性はまず間違いないが、あの攻撃っぷりには確証があるものと見て取れる。
(…コアはどこだ、そういった。どこかに本体がある!)



イチの無謀な攻撃は続く。
「らぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーッ!!!!!」
<<ツバメ返し>><<切返し>><<袈裟切り>><<ツバメ返し>><<切返し>><<袈裟切り>><<ツバメ返し>>……
残像を残す高速剣術を寸分狂わぬ正確さでつなげて行く。
イチの体から光が消えることはなかった。
このゲームには肉体の疲労というものを感じることはない。
ただ、これほどまでに長々と剣技を繰り出すというのは、マルチの常識を逸脱していた。
コンボカウンター機能でも搭載されていればゆうに120HITといったところだろうか?
3つの技を次々と表示していたが突然、
<<武御雷>>
という表示に切り替わった。
増えに増え続けていた残像たちが、残像そのものが動いた。
あまりの一瞬の多段攻撃にマルチをはじめ4人の剣士は息を飲むだけであった。
ポップアップダメージ表示にいよいよMISS!!以外の文字が表示された

MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
MISS!!
10
MISS!!
MISS!!

滝の様なMISSの嵐にポツンと10と表示されると共にバリン!と霧が一瞬にしてポリゴンのくずになった。



「で、大丈夫?」
コートの男は満面の笑みで私に手を差し出した。
いつの間にか私は座り込んでいたらしく、気遣って手を差し伸べてくれたのだろう。
「…まひ」
麻痺がまだ、と言いかけると同時に
「あぁ、まだパラライズだね。無理に立つより座ってたほうが良いか。とりあえずハイこれ、ハイポーション」
握り返そうと伸ばした手に高級そうなポーションを手渡すと、男は他のメンバーの方に歩み寄って行った。
さっきもそうだったが、この男はものすごく自己中なのだろうか。
…話を振っておいて話させないとは、どういうつもりなのか。
(こいつ…何様のつもりだ?)
いろいろ叱咤したかったが、麻痺のおかげで会話が困難であり、今は押し黙ることにした。
精一杯の力を振り絞り飲んだポーションの味は酸味が強く、体に浸透するような味だった。
どうやら男は他のメンバーたちにもハイポーションを渡しているようだ。


…一回りして、イチは再びマルチの前に立った。
「そろそろ治癒したんじゃないか?」
「あ…」
マルチはくっくっと右のこぶしを握ってみる。
どうやら麻痺状態は治癒したようだ。
他のメンバー達も立ち上がっていた。
いてて…などといいながらわらわらと集まってくる。
「…れいなんていらないんでしょ」
精一杯感情を抑え、冷静を装う。
今にもさきほど沸いた感情が吹き出そうだったからだ。
「あぁ。知るものが知らない物を助けるのは当然の義理、かなと」
おさえきれてない鋭い視線に、笑顔もなくイチは答える。
その物言いにマルチのなかで何かがはじけた。
「…あんた、何様のつも…」
「すげー!あんたすげー!さっきの何!?」
「ちょ…」
「刀ってあんなに強かったのかよ!?」
マルチとイチの間に割って入ってきたのはあっさり倒れた2人の盾剣士だった。
「武御雷のことかな?」
「そうそれ!一瞬だったからできれば詳しく…」
マルチのむき出しの怒りに触れることなく、3人は何だが盛り上がり始める。
「…もーなんなのよぉ!」


剣をむき出しにし、熱く語る3人の群れから2M。
顔をプンプンさせたマルチは座っている。
大剣を背に掛ける男が「…どうした?」と心配そうに声を掛けても「なんでもないわよ!」と怒鳴られる始末だった。
マルチ本人が自分が怒っていることを把握していないようだった。
…先ほどの戦闘で全く手も足もだせず、知識さえやくにたたなかった自分にたいする怒りか?
…情報不足で未知の迷宮区に足を勧めた自分たちに対する怒りか?
そんなことは全く頭にはない。
今マルチの考えの大半を占めるのは
(なんなのよこの男は!)
に尽きていた。
プンプンマルチをよそに大剣の男が語りだす。
「しかし、なんなんだあの…侍?は」
侍?という妙なアクセントはその風貌からそういったのであろう。
ユニークスキルに属する<<刀スキル>>だが、それは察して珍しいスキルではない。
特定のスキルをあげればほぼ全ての人間が習得できるという話だし、マルチや大剣の男も刀使いは過去に何度も見た覚えがあった。
刀=侍とは、普通は結びつかない。
コートの男、イチはまるで袴のような綿パンツを穿き、腰から刀を吊っていた。
つまり、あきらかに意識しているとしか思えなかったのだ。
「私が聞きたいわよ。なんなのあの自己中男は…」
そういいながらマルチはイチを睨み付ける。
…あれ。結構若そうだし、ちょっとかっこいいんじゃない?
などと考えているうちにイチと目が合ってしまった。
マルチの視線に気づき、イチはマルチに歩み寄る
「悪い。自己紹介すらしてねーや」
「あ、うん、そうだったね」
マルチの前まできて、ストンとしゃがみこんだ。
突然の顔の接近にマルチは内心ドキっとしていた。
「俺はイチ。刀使いで一応テイマーもしてる」
「私はマルチ、短剣使いのシーフかな?…って、テイマー?!」
マルチは当然のように驚き、数秒送れて2人の盾剣士も『テイマー!?』とはもった。
あまり驚きを見せなかった大剣の男は冷静に口を開く。
「その頭のが使い魔か?」
「そそ。ゴブドールっていうゴブリンの一種らしいんだけど、ふだんはドルって呼んでる。まぁ便宜上?みたいな」
見下ろすように眺める男にイチはけらけら笑って答えた。
イチはこの男がこのパーティで一番レベルが高いことはすぐにわかった。
腰をすえた雰囲気もあるが、この使い魔ドルの特殊な能力によるものが大きい。
「変わったやつだな。俺の名は…」
「大剣使いのグリフさん、最大HPは12445、現在HPは9521尚も回復中。かな?」
イチは正確に大剣の男、グリフの現在状態を言い当てる。
さすがにグリフもこれには驚き眉を動じた。
「…すごいな。ドル、とかいうのの能力か?」
「グリフさんのレベルもそうとうすごいとおもうんだけどね…。確かに、ドルの能力だよ」
ふむ、とドルを眺める。
グリフは最近まで最前線に立っていた攻略組の1人だったが、実力的には攻略組のしたから数えたほうが早いといえる強さだった。
そのため今でこそレベル上げのために戦線を離れ放浪としたレベル上げを行っていた。
「最近まで最前線にいた、っていう人間のHPだと思うんだけどね。この階だって来たことあるんじゃないの?」
見上げるように、そしてわざと挑発的にイチは問う。
よほどの精神力なのか、グリフはそんな挑発には乗らなかった。
「俺は攻略組でも下のほうでな。盾があるわけでもなく、圧倒的攻撃力があったわけでもなく。解禁済みフロアの未踏破地区探索ばかりをしていたんだ。この階の攻略には参加していないんだ」
な〜るほど、と大きく手を叩いてみせる。
「それよか、そのつよさと能力付きで前線にいないお前はどういうつもりなんだ?」
「そう!それよそれ!あんた何様よ!」
突然会話に割ってはいるマルチ。
だが、その口調に憤怒はなくなっていた。
今までけらけらと軽い態度だったイチは真剣な顔をして数秒だけ考える。
そしてゆっくり、はっきりといった。
「ビーターのイチ。それ以外のなんでもないと思うんだけど?」
ビーター、それだけを聞き、4人は押し黙る。
イチが一番嫌いな雰囲気、重い空気になってしまった。
こらえきれずイチは立ち上がる。
「ま、だから礼とかはいいんだ」
4人の輪から歩みだし少しずつ迷宮の奥へと向かって歩き出していく。
その背中には先ほどまでマルチも感じていた底抜けの自己中てきな明るさ微塵もなかった。
「馴れ合いは苦手なんだよ」
なんとも重苦しい顔をした4人は歩き出していくイチの背中に視線を向ける。
イチにとってはこのさめた視線はなれたものだった。
たった3日間、βを経験しただけなのだが。
その3日間があったからこそ、今生きていられるのは紛れもない事実である。
だから自分がビーターであることを悔いてはいないし、隠すことなどしてこなかった。
それでもやはり、言った瞬間のさめた顔は何度経験しても辛いものだとイチは思う。


ビーターだとしても、恩人にこの態度はどうか?
それはマルチのパーティメンバー達それぞれの心のうちに沸いたが、だれもそれを口に出すことはできなかった。

視界有効範囲ギリギリで闇に解けていくイチは最後に
「…人が死んでいくのって、たえられないんだよね」
暗い顔をし、ボソリとつぶやき、そして迷宮の闇に消えた。


                                         2へ続く〜 カモ


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以下、あとがきあとづけ見苦しいスペース('w'*


///今回このイチバンを書いていくに当たって///
自分でもやっぱり、なんかこういう話は書いたりしました。
けど書いていくうちに世界観とやってることのギャップなど出てきて結局最後まで行ったものは…なのですが。
あらためでくのりくおりてぃーの高さに惚れ惚れしました。
つーか設定多いよ、ifすぎだよぉ・・・(苦笑
着眼点?としては既存のスキルをオリジナルに発展的な感じでしょうか?
めちゃつよい使い魔というわけでもなくちょっと便利な使い魔と、早くてかるくて攻撃力がめっさ低い主人公のおりなす、ほのぼの中層物語!
がんばって続き書きます!前書きます!(設定参照?
なんだか前のひとがえらい波乱を生んでいたようで、一応現在浮かんでるネタをまとめたtexもあげてみたりします、はい。



最後に、すげー汚いのに最後まで呼んでくれたあなたにありがとーヽ(`Д´)ノと叫ばしてください、
ありがとーヽ(`Д´)ノ